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髪の毛を乾かしながらスマートフォンをのぞき込む。案の定凄まじい量の通知が届いていた。記憶に留めようとしてはいない読み方で、メッセージを幾つか読んだ。おはようございます。今朝のご機嫌はいかがですか。プレーヌさん、今朝も素敵ですね。馬鹿なんじゃないだろうか。
舌触りの良い、突き刺さるような言葉をすらすらと考えるのはとても得意だ。
そこにほんの少し、夜のにおいを含ませるのも。
私には、淫売、の、血、が、流れているので。
トースターに食パンを入れて、スイッチを入れる。今日は苦いコーヒーを飲もう。ワンルーム、お風呂とトイレ付きの古いアパートメント。古いドライヤーを使ってみたらホコリが詰まっててばちばちと火花が散った。一昨日引っ越してきたばかりなので、台所周りしか掃除が行き届いていない。
どことなく、むかぁしの外国の雰囲気を感じる街で、私は生まれた。
母も、この街で、生まれて、このちっさなアパートメントで、たった独りで暮らしていたと、シスターに聞いた。
*
モスグリーンのブレザーに、グレイのタイと、赤いワンポイントの紺ソックス。赤いタータンチェックのスカート。有名なデザイナーにデザインしてもらったと入学説明会で説明された高校の制服になんの感慨もなく袖を通した。茶色のローファーをベッドに腰掛けて履いた。この家は土足ですよ、と金髪の混じる白髪のうつくしい家主が言っていた。
古い鍵を締める。教会で育てられた私にとって鍵を持ち歩く生活はこれが初めてだった。
「おはよう、浪上さん」
「あ、おはようございます」
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