卑しい赤い花が咲きました。

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「あの、やっぱり、って?」 「だってあなたが一番綺麗だもの。あら、階段よ、気をつけてちょうだい」 慌てて前を見て歩き出す。後ろのクラスメイトは芝居がかった笑い方で笑っている。 「あたし、バーンズ・七月(なつ)っていうのよ。バーンズが苗字で、なつが名前ってことで。漢字は一月二月の七月。お察しの通り誕生日は七月七日。おじい様が外国の人なのよ。だからバーンズを名乗っているのだけど。あなたは気付かなかったようだけど、隣の席。よろしくしてちょうだいね」 「はぁ……」 「あなたのご家族はどなたが外国人なの?」 もはや私の周りで話しているのは、私と隣の席だと言う彼女だけだった。十代の少女特有の不安げで消えそうな表情をしたクラスメイトしか周りにいない。 「あの、バーンズさん」 「やだ、名前で呼んでちょうだい」 「……七月さん。あの、あまり私と話しても」 「あなたと話してはご迷惑?」 「……ええ、そうよ。私とは、話さない方がいいと思う」 「どうして?」 「あまり、良いことにはならないから」 「それは、あたしにとって?あなたにとって?」 「七月さんにとって。良くはないわ。入学早々浮くような真似をしなくったって」 あはは、と後ろで笑い声が弾ける。 「お気遣いありがとう!でも、とっても余計な心配だわ、それ。あなたと話してたら浮くことくらいわかっているもの」 「あと、嫌いなのよ」 聖堂にクラスメイトが次々に飲み込まれていく。並ぶ順番はなんでもいいのよ、とシスターが一言添えるといくつかのグループが出来た。おそらく、同じ中学の出身のグループなのだろう。
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