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とある街の一角で、今日も今日とて競り合い打ち合いぶつかる音がする。
「はぁ…やばい、今日はヤバイ。
いや、今日もヤバイ。
一体俺が何したってんだ…」
「まぁ、強さとはそういう事だよな」
手に握る刀を支えに、より掛かるように立つ男は、目の前で倒れている奴等を視界に収めながら溜め息が漏れ同時に言葉も漏れ出てしまう。
その横では、タバコを咥え赤と白の旗を持った男が皮肉めいた笑みを浮かべ、疲れを見せる男に言う。
「何が強さだ。
大体、うちの学校のシステムがおかしい。
何が戦った結果、上位順に余分部費が振り分けします。だよ…
しかも一年ぶっ通してってなんだよ!」
「とか言いつつ、君だってしっかり戦ってるじゃないか」
「今年は俺の番なんで、仕方ないでしょうよ。
手を抜くと、部長にめっちゃ扱かれるんですよ」
刃引きされた刀を持った男が通う高校は、特殊なシステムを取り入れ、様々な部活同士の交流を大切にしていた。
という建前の元、どの部活が勝つかの賭けが行われ、収集した金から部費が出ていたりもする。
「まぁ、今年の剣道部は君が代表で一人って噂広まってるから。
しょうがないね」
「多勢に無勢って言葉知ってます?」
「別に、剣道部も複数参加は認めてるけど?
去年は一年生が十人で参加してたはずだし」
「部長と一本勝負で負けて…」
「賭けをしたと…。
風紀が乱れてるなぁ…先生としては、あんまり関心しないぞ」
「どの口が」
「ま、俺は卓球部に賭けてるから、君が一人って言うのは嬉しいんだけどね」
悪びれる様子もなく旗を持った男は言った。
その言葉に剣道部の男子は、恨めしそうな顔をして言葉を返す。
「職務中は禁煙してるんじゃないんですか?」
「ん?五時過ぎだから、今日は俺は上がりなの。
校内であれば授業中と飯中以外なら、戦闘を申し込めるから…分かる?意外と教師も大変なのよ?
生徒が宣言したら俺達教師は必ず立ち合わないといけないんだからさ」
「知りませんよ。
生徒は生徒で参加者は部員からのプレッシャーがヤバイんですから」
男子の言葉に苦笑いを返した教師は、近くの自販機からミネラルウォーターを二本買うと、その一本を男子に渡した。
「賄賂?部長が怖いんで、手加減も八百長もしませんよ」
「先生からの労いを素直に受け取りなさい」
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