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「あら、剣道部の方ですわ」
「本当ですわね」
「食前の運動でも致しますか?」
「それはいい案ですわ。
丁度、先生もいらっしゃいますし…。
先生、よろしいですか?」
「あぁ、まぁ申請可能時間だし俺はどうこう言えないからな」
御淑やかに歩き寄ってきた四人が教師に許可を取ると、逃げようと走り出していた男子に向け言った。
「茶道部は剣道部に試合を申し込みますわ」
「はい、承認」
男子に聞こえるように少し大きくした茶道部の女子の声も、少し笑い混じりな教師の声も、しっかりと男子の耳には届いていた。
「…勘弁してくれ。
俺は、今日はもう休みたいんだ…。
今日はもう、疲れた…もう、嫌なんだ…」
「と、言ってもな。
仕方ない、諦めろ。
だが、良かったな。
申請時間、たった今過ぎたぞ!これが今日の最後の試合だな!」
「拒否を…」
「時間内に認めたから無理だ。
諦めろ」
無慈悲にも告げられた言葉に、男子はその場に崩れ落ちた。
「そこ数分…見逃してくれよ…」
「ほら、八百長とかダメなんだろ?
先生。公平。悪くない」
「……夜道には気を付けてくださいね」
呟きつつも男子は刃引きされた刀を構え、教師の合図を待つ。
「ははは、先生は強いぞ―。
んじゃ、両者準備は良いみたいだな。
試合を開始する…始め!」
今日も今日とて競り合い打ち合いぶつかる音がする。
それは、明日も明後日もするだろう。
そんな日々に嫌気が差しながらも、彼は刀を振るう。
「ヤバ…茶道部強すぎ…
もう、帰りたい」
愚痴を零しながらも。
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