帰ってきたベール

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野良猫のベールが自動車にはねられた。 左の眼球が飛び出し、ブラブラさせている。 地面と体は血で濡れていた。 それでもよろよろとしながら、周りを囲む人をよけて歩き出す。 この猫は人に媚びない、なつかないで有名な野良猫だ。 それでも若いお巡りさんがなんとか捕まえて、パトカーで連れて行った。 1週間後、ベールは帰ってきた。 片目は充分には開かなくて、歩くことはできても、走ったりしゃがんだりは辛そうだった。 ふと、僕を見つけたベールが、尻尾を高く掲げ、ゆらゆらと振りだした。 猫が「ゴキゲン」を示すサインだ。 僕はベールがはねられた時、何かできることはないかと考え、目一杯「気」を送ったんだ。 前にガラスに激突した小鳥に、気を送って蘇生させたことがあった。 それが猫に通用するかはわからなかったけど、それでも「こんなことで死んじゃダメだ!こんな理不尽なことで!」と思いながら、気を送ったんだ。 それが役に立ったかはわからない。 でもベールが僕を見つけて伝えてくれたんだ。 「大丈夫。ゴキゲンだ。」って。 (おしまい)
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