①シノザワ ソウスケ

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たった今、ここにあったものと同じ顔が玄関の凡そ十センチほどの隙間から覗いていた。 そんな警戒しなくても、と窺った彼女は刺さるようなロングヘアを揺らして、僕の断りを聞き終わる前に扉を閉めた。 完全なる人違い。不一致、といった方が正しいだろうか。 だけど、僕が興味を持った彼女は人違いじゃない。それ以降、認識のうえでは僕はきちんとサラシナココロを分別していたのだから。 また、明日。 部屋を破壊し続けるヒステリックな女だろうか。それともそれを宥める男だろうか。 一部始終のロードワークの末、一人踞る彼女が来たら今度こそ、引っ越しのご挨拶をしなければ。 お隣さんは今日も明日も騒がしい。 寝静まるまで、僕は塞いだ耳の隙間で一つの小さな気配を探り探り。 『疲れた。もうイヤだ』 彼女のテンプレートが聞こえてきたら、今度こそ。
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