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先週末。
うるさい、騒がしい、派手なんてもんじゃない喧騒は女が喉を潰すまで続いた。
これでよく苦情がこないもんだと感心するくらい。
時折、男の声もして一体何人いるんだと、煩さに塞いだ耳をついつい傾けてしまう。
「話が反れてしまいましたね」
強張る肩を見ても、泣いている姿を知っていても、優しくない僕は彼女を逃がさない。
「毎日のように騒いでいるアレはなんですか?」
自分でチビだと言うだけあって、対峙した彼女の脳天を僕は見下ろす形になる。
「織田さんこそ、さっきの」
「話をすり替えないでください」
「すり替えてません。たった今の話をしてるんです」
ふむ。
キッと見上げてくる顔は背伸びしているようで威厳には欠けるものの、成る程。
「確かに」
見た目によらず、ってやつか。
メソメソ泣いているだけかと思っていたけれど、意外とそういう訳でもないのかもしれない。
どうぞ?とソファーへ促すと、間を置かずに彼女はそこに身を埋める。
負けん気が強いのか、はたまたただのバカなのか。帰る、という選択肢を与えたつもりだったのに。
「先ほどは驚かせてしまいましたね、すみませんでした」
「あたしこそ、近所迷惑だって分かってます、ごめんなさい」
「誰なんですか?」
僕が引かないことを察した彼女は不満げに唇を歪ませて、それから、
「……あたし、です」
絞り出すように呟いた。
むくむくと、僕の中で何かが膨れる。
苛立ちと嘲笑と、……とにかく、気に食わない何か。
「そうですか」
舌打ちをしたい気分で、皮肉を込めた笑いを浴びせたい思いで、絞り出すように吐き出された僕の声は意に反してとても穏やかだった。
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