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仕方ない、とにかく彼女は来てしまってるんだし・・
メイは笑いながら繭を見る。
彼女は彼女なりに色んな思いを抱えているのかも知れない・・
そう思った。
「男ならいるわ。
一歳児だけれど」
繭はメイの答えに目を丸くして言葉を詰まらせた。
「幸哉です。
皆さん幸彦にそっくりだと言ってくれるんですよ」
メイがそう言うと恐る々幸哉を覗いた。
「繭さんて、子供苦手ですか?」
メイがそう聞くと慌てて否定する。
「そうじゃないけど、触った事無いから・・
私一人っ子だったし、従姉妹も年が離れてて小さな子供って周りにいなくて」
メイには繭の顔が子供のように見えた。
「抱いてみます?」
そう聞いて繭を覗く。
「いいの?泣いたりしない?」
繭はまた幸哉を見る。
「大丈夫です。
この子人見知りしない子だし、繭さんて私に似てるから」
メイは幸哉を繭の腕に抱かせた。
「重い・・
一歳ってこんなに重いんだ」
幸哉はメイの顔と繭の顔を交互に見る。
暫くすると手を伸ばして繭の顔を触る。
きゃらきゃらと笑いながら愛想を振り撒いた。
「メイさん、開けるよ」
急に玄関から男の声がした。
メイが席を立つと幸哉を抱いて繭も玄関を覗いた。
大きな魚を素手で下げた年配の男性がメイと笑いながら話をしていた。
「おっ、幸坊、今日は美人の叔母ちゃんに抱かれて機嫌が良かじゃなかか。
じいじが鯛を釣って来てやったけんな、沢山喰うとぞ」
「ありがとうございます、玄さん、けど、こげな大きな魚を下ろした事なかです。
どうやって食べたら・・」
「なんな?知らんな?
よかよか、なら俺が刺身にするけん、頭は酒蒸しか煮物にしたら良か・・
ゴボウはあるとね?」
「ゴボウ?有ったかな?
待って、冷蔵庫見るけん」
「ああもうよかったい、由利子に作って貰うとよか。
俺が電話をしてやるけん」
そう言うとずかずかと台所に入って行く。
暫くするとまた玄関から声がした。
「メイさんゴボウ持ってきたよ。
玄のまだいるとね?」
メイは台所から顔出す。
「あっ、由利子さんこっち。
すみません、酒蒸しか煮物にって玄さんが言うんだけど、私作った事なかもんで・・」
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