姉妹

5/8
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
「よかったいうちが作るけん。 身は刺身にしたとね、メイさん、ワサビや刺身醤油の有るとね? 生醤油はつまらんよ。 玄、鯛だけも淋しかね・・ 他は無いとね」 「ああそう言えば、宮ちゃんがガザミばやろうか言うとったな、ちくっと貰ろうて来るわ。 後、中ん所からイイダコの炊いたとも取っち来るけん」 玄さんとメイが呼んだ男性が玄関のドアを開けた。 繭を見るとニコッと笑う。 直に台所から美味しそうな匂いが漂う。 「何処に並べたらよかね?」 「なら、和室のテーブルに」 メイが由利子さんと呼んだ女性は手早く食卓を整える。 あっという間に海の幸がテーブルに並んだ。 「繭さん、お魚大丈夫ですか?」 メイが繭を見る。 「ええ、お魚は好きよ」 「そう?良かった」 メイが幸哉を繭の腕から抱き戻す。 「好きな所に座ってね」 そう言って繭に微笑みかけた頃、玄関に女性の声がした。 「なんね、玄は?」 由利子がそう聞いて女性からおかもちを受け取る。 「うちの父ちゃんと酒ば飲みだしたけん、うちが代わりに持って来たとよ」 「宮さん悪かね、重かったでしょ?」 メイも玄関に出向いた。 「酒のあてば作っとるけん、うちはこれで」 繭の顔を見ると頭を下げて出て行った。 「気にせんでね、あん人は人見知りが激しかばってん、人は悪うなかけん」 由利子がそう言ってから幸哉の頬に手を伸ばした。 「あんたも沢山食べるんよ。 イイダコもじいじが持ってきたけんね」 幸哉はニコニコしながら由利子にも手を触れる。 「あんたは可愛いかね、ばあばは帰るけんね。 明日は遊びにおいでね」 そう言うとメイに何かを言った後帰って行った。 「すごい・・何を言ってるのか全然分からないけど・・ 貴女が父に困っても島の人が助けてくれるって言ってたのって、本当だったのね・・ でも、何で皆私に笑いかけるの?」 繭は不思議そうにメイに聞いた。 メイは笑いながら繭を見る。 「皆、繭さんが私のお姉さんだと思っているみたい・・」 「そうなの? どうして?」 「多分、顔・・」 「ああ、そうか・・」 「昔ね、幸彦が初めてこの島に来た時は、エンリコ神父っていう方がここの教会にいらしたんだけど、幸彦、エンリコ神父の隠し子だと思われたらしいわ・・」
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!