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「よかったいうちが作るけん。
身は刺身にしたとね、メイさん、ワサビや刺身醤油の有るとね?
生醤油はつまらんよ。
玄、鯛だけも淋しかね・・
他は無いとね」
「ああそう言えば、宮ちゃんがガザミばやろうか言うとったな、ちくっと貰ろうて来るわ。
後、中ん所からイイダコの炊いたとも取っち来るけん」
玄さんとメイが呼んだ男性が玄関のドアを開けた。
繭を見るとニコッと笑う。
直に台所から美味しそうな匂いが漂う。
「何処に並べたらよかね?」
「なら、和室のテーブルに」
メイが由利子さんと呼んだ女性は手早く食卓を整える。
あっという間に海の幸がテーブルに並んだ。
「繭さん、お魚大丈夫ですか?」
メイが繭を見る。
「ええ、お魚は好きよ」
「そう?良かった」
メイが幸哉を繭の腕から抱き戻す。
「好きな所に座ってね」
そう言って繭に微笑みかけた頃、玄関に女性の声がした。
「なんね、玄は?」
由利子がそう聞いて女性からおかもちを受け取る。
「うちの父ちゃんと酒ば飲みだしたけん、うちが代わりに持って来たとよ」
「宮さん悪かね、重かったでしょ?」
メイも玄関に出向いた。
「酒のあてば作っとるけん、うちはこれで」
繭の顔を見ると頭を下げて出て行った。
「気にせんでね、あん人は人見知りが激しかばってん、人は悪うなかけん」
由利子がそう言ってから幸哉の頬に手を伸ばした。
「あんたも沢山食べるんよ。
イイダコもじいじが持ってきたけんね」
幸哉はニコニコしながら由利子にも手を触れる。
「あんたは可愛いかね、ばあばは帰るけんね。
明日は遊びにおいでね」
そう言うとメイに何かを言った後帰って行った。
「すごい・・何を言ってるのか全然分からないけど・・
貴女が父に困っても島の人が助けてくれるって言ってたのって、本当だったのね・・
でも、何で皆私に笑いかけるの?」
繭は不思議そうにメイに聞いた。
メイは笑いながら繭を見る。
「皆、繭さんが私のお姉さんだと思っているみたい・・」
「そうなの?
どうして?」
「多分、顔・・」
「ああ、そうか・・」
「昔ね、幸彦が初めてこの島に来た時は、エンリコ神父っていう方がここの教会にいらしたんだけど、幸彦、エンリコ神父の隠し子だと思われたらしいわ・・」
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