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「やっぱり顔が似てたの?」
「いいえ、エンリコ神父はイタリアの方だし、それはないみたいだけど、多分雰囲気が似てたのかも知れないわ」
繭はメイの顔を見る。
「繭さん、今日はこれを食べて絵は明日からにしましょう」
繭は笑いかけるメイに急かされ箸を持った。
食事か終ると島に一つだけある温泉に向かう。
メイ達が着いた頃には皆、風呂から帰るところだった。
「この島の人は殆どが漁師さんなの。
朝が早いから、多分もう誰も来ないわ・・
ゆっくり入ってね」
繭は黙って湯に浸かる。
湯気の中で笑う幸哉を見ていた。
「ねえ、私が幸彦さんと何か有ったら、貴女どうする?」
急に繭がメイに聞いた。
「何も・・
幸彦って不器用なの。
繭さん・・
私が幸彦のものになった時、私はまだ初潮も経験してなかった・・」
繭は驚いてメイを見た。
「幸彦、うちに引き取られた時、15歳だったの・・
私は10歳だった。
でも彼はその時にはもう、家を出る準備をしてたわ。
私、幸彦がいつか出て行ってしまうって、いつも怯えてた。
だって、私には幸彦だけが家族で、たった一人愛せる人だったんだもの」
「どうして?」
「母は弟が可愛い・・
私はあの家ではいつも一人だった・・幸彦が来るまで。
だから、両親と弟が家を空け、二人だけになった夜、私から幸彦を求めたの。
幸彦はその時、まだ私を子供って思ってたと思う・・
でも、私が幸彦を誘惑したのよ・・
13歳だったの私・・
幸彦は17歳だった。
でも、幸彦は罪悪感に私を遠ざけようとしてたわ。
だから私、毎日彼の部屋で眠ったわ。
そして、中々手を出さない彼に自分から抱き付いたの・・
彼が自分から私を抱いたのは、私が16になった頃よ。
私ね、幸彦に焼きもちを焼かせたの・・
同級生の男の子を連れて彼のバイト先に買い物に行ったり、わざとお金を忘れた振りをして、男の子に払わせたりしたわ。
だって、幸彦ったら、愛してるの一言も言わないのよ。
そして、私を守るためにアメリカに行ってしまった。
貴女が思ってるより、辛い事の方が多かったのよ私達」
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