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幸彦の事を尋ねるうちに神田祐二と親しく話すようになった。
「ヨハネ神父って、お嬢さんの初恋の人?」
何度目かに彼の事を聞いた時神田が遠慮がちに聞いた。
「何故?恋人だったとかじゃなきゃ聞いちゃいけない?」
そう聞くと困った顔をする。
「そうじゃなくて・・
もしそういう人ならもう僕に聞かないで欲しいと・・」
「どうして?」
神田は15年も住み込みの秘書だ、繭にしてみれば家族のような存在だった。
「お嬢さん・・いや、繭さん・・
僕、貴女が好きです・・
初めてこのお宅に来た時からずっと・・
2年前、長崎の父から帰って来て後を継げと言われた時に一度は貴女に告白をと思いましたが・・
ヨハネ神父の事が気になってできませんでした。
あの時は彼もまだ健在だったし・・勇気も無かった。
でも僕、今度の選挙に出させて貰えるんです。
当選できるかは分りません。
だけど貴女が傍で支えてくれたら、僕は必ず次世代を動かせるような男になります。
浮気もよそ見もしません。
女性は貴女一人。
先生のような思いはさせません。
あっ・・すみません・・」
繭は神田の告白に驚いた。
そして笑いこけた。
父のような思いはさせない・・か・・
じっと神田の顔をみる。
お世辞にもハンサムでもイケメンでもない。
誠実だけが取得の男だ・・
でも私が幸彦の事を聞くたびにこの人は妬いていたのだろう・・
顔にも出さず黙って恋敵かも知れない男の事を調べてくれた。
「神田君・・いいえ祐二さん、私の何処が好き?」
「何処って・・」
「私、気が強いわよ。
それに我儘だわ。
金持ちの家の一人娘よ、金使いも荒いわ」
「知ってます・・
15年ずっと貴女を見つめて来たんです。
それに・・貴女は気が強くなんて無い。
それは自分を守る為の鎧のようなものです。
我儘だって僕には可愛い位にしか感じない。
お金は、頑張って稼ぎます。
直ぐに先生と同じと言う訳にはいかないけれど僕にだって少し位は蓄えもある・・
それがなくなる前には稼げる男になります」
「私と結婚するなら婿養子よ。
一人娘なんだから・・
長崎のお父さん納得させられるの?」
「結婚?僕と?」
「あら貴方、結婚もする気が無いのに私に好きだと言ったの?」
「とんでもない、結婚なんて夢みたいで」
そうして私はあっさり結婚を決めた。
周りの誰もが驚く中で・・
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