繭と祐二

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「分かるぅ・・ 幸彦が好きだったから、彼が食べてる時は幸彦の方を見ないようにしてた」 「そうなの? 祐二さんも好きかしら? 嫌だな・・」 「大丈夫よ匂いはあまりしないもの、見なければ平気」 「そうか、あれってお醤油の匂いだったね」 メイは堅焼きの目玉焼きを繭の前に置く。 幸哉のお皿には自分の目玉焼きの白身だけを取って乗せた。 「幸哉は黄身ダメなの?」 「うん、この前まで食べたんだけど今は白身の方が好きみたい。 何でも食べるんだけど、なんかマイブームみたいのがあるらしくて」 「へえー、そうなんだ」 繭も座って食事を始める。 居間の電話が鳴った。 幸哉の口にご飯を運んでいたメイが立ち上がろうとする。 「いい、私が出る」 繭がさっと居間の電話を取った。 「はい・・あの・・」 「繭・・さん?」 祐二だった。 「どうしてそこに? あちこちかけてもいないからもしかしたらって・・ でも何故?もう神父はいないのにどうして?」 「祐二さん、ここ、画家のメイさんの家だけど・・」 「えっ?あれ間違えたかな?確かに神父さんの電話に・・」 「ごめんね、携帯電源が無くなって今充電してるの。 携帯が起動したら掛けなおすつもりだったの・・」 「いいですよ・・ 貴女が無事なら・・ メイさんの家だけど、何処ですか?迎えに行きます。 それと、先生には長崎の僕の実家にいると言ってありますので」 「ごめんなさい・・ 心配かけて・・ 迎えだけど明日じゃダメ? お父さんが彼女に依頼した私の肖像画のモデルをしてるの。 直ぐに帰ろうって思ったんだけと、絵って直ぐには描けないらしくて・・」 祐二は少し間を置いてからタメ息を吐いた。 「分かりました。 では明日迎えに行きます。 繭さん・・ 僕、貴女に告白する前は貴女が誰といるとか、どこにいるとかを考えてもこんなに不安になった事は無かった。 でも今は貴女が僕の知らない人といたり、知らない場所にいる事が嫌で堪りません」 繭は祐二の言葉に驚く。 この人がこんな事を言うなんて思ってもいなかった。 いつも自分には遠慮がちに、婚約が整ってもいつまでも父の秘書のままだった。
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