繭と祐二

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メイは吹き出しそうになるのを堪えながら繭を見る。 「でも良かったじゃない。 彼の気持ちは分かったんだし、貴女の気持ちも見えたんじゃない?」 繭はメイを見る。 そうか・・ 私、焼きもちだけでここに来たんじゃ無かったんだ・・ 同じ父を持ち同じ男を好きになった妹に会いたかったのかも知れない・・ 自分よりも先に(女)になった妹・・ 自分よりも先に(母)になった妹・・ そんな妹が今どんな暮らしをしてるのかが見たかったのだ・・そう思った。 「それで?モデルはどうします?」 「やるわ。 彼には明日迎えにって言ったもの・・」 「分かった。 じゃ食事が済んだら始めましょ」 食卓に戻るとベビーチェアの上で幸哉が眠っていた。 「あら、ゆっくん寝ちゃったの?」 メイが幸哉を抱いて和室に運ぶ。 幸哉が去った後は床もテーブルも食べこぼしやらなんやらで、まるで台風が去った後のようになっていた。 「凄いでしょ? でもこれも後半年くらいらしいわ・・ そのうち上手に食べられるようになって私の手も要らなくなる・・ そう思うと少しだけ淋しい」 メイがそう言いながら後片付けをする。 繭はそんなメイをじっと見つめた。 「ねえ、私に子供が出来たら電話してもいい? 子育てで困ったり悩んだりしたら」 「いいわよ、私の経験なんて知れてるけどこの島には子育ての先輩が沢山いるから・・」 「それと・・ 彼と喧嘩したら、来てもいい?貴女の所に・・」 「いいけど、お客扱いは今回だけよ・・ それても良かったら何時でも歓迎するわ」 メイは笑いながら繭にそう言った。 昨日は少し迷惑だった・・ 我儘そうな繭・・ もしかしたら幸彦が好きだったかも知れない繭・・ 同じ父を持つふたつ歳上の自分によく似た顔をした得体の知れない繭・・ そう思っていた。 でも血って凄いのだ・・ 弟の時もそうだった。 何年も会わなくても、私が自分の事ばかりの時も彼は私を思ってくれた。 繭もまただった一日一緒にいただけなのに、生まれた時から共に暮らした姉妹のように思える。 本当に不思議だった。
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