繭と祐二

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後片付けが済むと、幸哉が起きないうちに構図を決めデッサンに入る。 粗方炭取りが終わった頃幸哉の泣く声でその日の作業を終えた。 「繭さん、細かな顔のデッサンがまだだから後で写真を取らせて。 スマートフォンなら拡大も出きるし」 「分かった・・ 私もお願いが有るんだけど」 「何かしら?」 「幸哉と三人で写真を取らせてくれない?」 「三人でって、私も?」 「ダメ?」 「分かった。 でもあまり他の人に見せないでよ。 貴女と比べられたら見劣りするもの」 繭は笑いながらメイを見る。 見劣りするなんて嘘・・ メイの方がよほど綺麗だと思った。 「分かった・・ でも父には見せてもいいでしょ? 幸哉だって本当は初孫だし」 「繭さん、私の父は今の父よ・・ それが皆が幸せに暮らせる、そうねおまじないみたいなもの・・かな?」 「それなら、私の友達・・ ならいい?」 「そうね・・ 見せないでって言っても無理だろうし・・ 昔ね、幸彦が言ってた・・ ずっと年齢を重ねてお互いの老いを笑い合えるようになったら、昔の事は夢か何かのように見えるって、間違いも恨みも、みんな愉しい思い出になるんだって・・ だから私達もそれまではおまじないを唱えながら一生懸命生きなくちゃ・・」 繭は自分よりもはるかに大人になったメイを羨ましく見る。 「そうね・・ ねえ、やっぱり幸彦さんって凄い人だったのね・・ あの時無理やり横取りしとけば良かったかな?」 「貴女はそんな事しないわ。 自分を愛してもくれない男なんて貴女に取って何の値打ちもないもの」 メイは笑いながら繭を見る。 そして、どんなに顔が似ていても幸彦は私だけの人だと思った。 「そうね、どんなに素敵でも私を思ってくれない男じゃ仕方ないわね」 「そうよ、祐二さんだったわね繭さんの彼・・ 今頃朝イチのフェリーの時間検索してるわ。 下手したらもうフェリー乗り場に居たりして・・」 繭とメイがそう話しながら笑っていた頃、祐二はフェリー乗り場の駐車場に車を停め朝イチのフェリーを待っていた。
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