3.やさぐれ・カルボナーラ

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 十月。  いつの間にか暑さも過ぎ去って、ずいぶん過ごしやすい時期になってきた。  読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋、食欲の秋。うん、私は言わずもがな、食欲の秋なんですけどね。  それから、気候が良いせいか、五月と並んで披露宴も多い時期。私も今週の土曜日、高校の友達の披露宴にお呼ばれしている。  当日の髪型はどうしようかな? とか、ご祝儀袋を買ってこなくちゃ、などと考えながら家を出て商店街の通りへ抜けると、九十九堂のおばさんがお店の前を掃き掃除していた。 「おはようございまーす!」 「あら! まどかちゃん、おはよう」  サッと素早く振り向いたおばさんのメガネに朝日が反射し、相変わらず目元が良く見えないけど、少し時代遅れなカラーの口紅に彩られた唇は、私も見習わなければいけないような完璧スマイルだ。こうして顔を合わせるのは、ちょっと久しぶりかな? 「いいお天気ですね」  挨拶だけというのも愛想がないので、当たり障りのない話題を振ると、おばさんは「ほんとそうよねぇ」と大袈裟に頷いてから、急に何かを思い出したように意味ありげな笑みを浮かべた。
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