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「あ、あの、それは一体なんのことですか?」
まさに寝耳に水の状態に、ウワサの当人である私の方がパニくってしまう。おばさんは「あらやだ!」とニンマリ笑って、私の腕を軽く叩いた。
「またまた、とぼけちゃってぇ。……あっ、もしかして、まだ内緒なのかな? わかったわ。ごめんなさいね。おばさんもお口にチャックしておくから」
そう言って親指と人差し指で自分の唇をキュッとなぞる。
う? いやいや、本人を置き去りにして勝手に納得しないでもらえます!?
「ちょっと待ってください。本当になんのことだか……」
オロオロしながら真相を尋ねようとすると、おばさんは「大丈夫、大丈夫。知ってる人はごく僅かよ」と訳のわからないフォローをして、そそくさとお店の中へ入って行ってしまった。
「あっ、おばさん!」
伸ばした手がむなしく空を掻く。
な、なんだ? なにが起こってるんだ?
その場に立ち尽くしたまま頭をフル回転させてみるけど、そもそも身に覚えがないから、かえって混乱するばかりだ。
おばさんの口ぶりからすると、どうも私に結婚相手が見つかったか、結婚を前提にお付き合いするような、良いお相手が見つかったって感じだったよね……。
…………誰? マジで。
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