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「だとすると来海さんは、ここにいる場合じゃないですね」
感動の場面だというのに、百瀬さんがしれっと言い放つ。確かにそうだけど、今回うちの店へやってきたのは、必要なことだったんじゃないかなぁ。
それにしても百瀬さん、もう少し優しい言い方はできないものでしょうか? 来海さん、泣いているっていうのに……。
「ったくもー! 百瀬さんはデリカシーがないなぁ!」
孝輔がカウンターを回って来て、百瀬さんを肘で小突く。
「なんだよ、うるせーな」
「それはこっちのセリフです。さぁ、来海さん。泣くのはおよし? 泣くなら、この東雲孝輔の広くたくましい胸が空いておりますよ!」
さぁ! と両腕を広げた孝輔に、来海さんが顔を上げる。
目元を拭った彼女は、また新たに熱い涙を浮かべると、強い感情に堪えきれなくなったように、ひしっ、と強く抱きついた。……百瀬さんに。
きゃあ~!!! 来海さんったら、来海さんったらー!!
「ちょー! ちょー! ちょー!! なしてよ!? ここは俺でしょ!?」
見事に空振りした孝輔が信じられない! と吠える。うん……。ホントにいろんな意味で残念だったね。
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