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真夏の暑さを通り越し、
痛いくらいの日差しが照りつける午後。
俺は幼馴染の拓未(たくみ)に呼び出されて、家の近くの海岸の防波堤に座っていた。
防波堤のアスファルトからも暑さが伝わってきて、座っているだけで汗が流れてくる。
「よー、待たせたな。」
Tシャツ一枚の俺と対照的な、チェックのシャツをきれいに羽織った拓未が涼しげに防波堤へとやってきた。
「呼び出しておいて遅刻かよ。」
遠慮なく悪態をつくが、意に介さず拓未は汗だくの俺の隣に座る。
「仕方ないだろ、お前の家より遠いんだから。」
ここは地方の田舎町。豊かな漁場に恵まれた漁業が中心の港町で、車の免許のない俺たち高校生には自転車が大切な移動手段だった。
拓未はきっと急いで自転車でうちの前のこの防波堤まで来てくれたんだろうけれど、この暑さの中汗ひとつかいていないのが不思議でたまらなかった。
「で、呼び出した要件は何?」
照りつける日差しを手でよけながら俺は拓未に尋ねる。
「洋人(ひろと)、俺さー、この町出るわ。」
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