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洋人と奈波
家の前の港の防波堤から全速力で走って、高台の家に駆け込んだ。
まるで拓未から逃げるように。
真夏の日差しと全速力で走ったせいで、暑さで汗が止まらない。
拓未の言葉で、俺の頭の中も熱くて溶け出しそうだった。
とにかく頭と体を冷やしたくて、俺は着ていたTシャツを脱いで軒先の物干し竿に投げ付けて、庭先の漁用の網を洗う水道の蛇口を思いっきりひねる。
蛇口に繋がってるホースを頭の上に持って来て、水を一身に浴びる。
「あー!!」
水が冷たくて気持ちいいからか、拓未に対するモヤモヤした思いからか、思わず声をあげてしまう。
幸い、父ちゃんは海に出ていて、母ちゃんは漁協婦人部の集まりに行っていて家には誰もいないから怒られる事はなかった。
履いていたジーンズと中のパンツまでびしょ濡れになったけど、まだ体の熱さが抜けなくて、水を浴びる事はやめなかった。
段々と熱が冷めていき、水道の蛇口をしめて水を浴びるのをやめて庭先に置いてあるビール瓶のケースに腰掛けた。
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