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洋人と圭介
相変わらず蝉の大合唱がうるさい国道の歩道を、ゆっくりと自転車を漕いで進む。
頭の中でこだまするのは、蝉の大合唱だけじゃない。
拓未がこの町を出る。
そして、奈波はどうするのか。
この答えを知りたくて、俺は奈波の家へと向かっていた。
さっきの、家での奈波とのやりとりが頭から離れない。
なぜか動揺して奈波をそのまま帰してしまったけど、後から後からじんわりと、それじゃいけないって思い始めた。
あのまま、奈波がどこか遠くへ行ってしまう。
もうずっと会えなくなってしまう。
そんな不安感だけが俺からまとまりついて離れようとしなかった。
このままじゃいけない。
俺は自分を奮い立たせて、奈波に会いに奈波の家に向かうべく自転車に乗っていた。
奈波にはいつもはぐらかされてばかりだけど、今回はそれじゃいけない。
きちんと、奈波の答えを聞きたい。
リアス式海岸に沿った曲がりくねった高低差のある国道をひた走って、俺は奈波の家にたどり着いた。
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