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深夜2:00。
鈴(すず)ちゃんは、自室の机に向かって生物の教科書を開いていました。
後ろから見れば教科書を熟読している風ですが、実際にはどこも見てはいないのです。
明日から始まる期末テストの追い込みをしなければいけないはずなのに、すでに心は根元からぼきっと折れているようでした。
「あーあ、もう、だめだだめだ」
上を向いた自分の顔に教科書を被せて、ぼそっと呟きます。教科書の端からちらりと横目で見ると、机の脇に鞄が見えました。
鈴ちゃんが通う高校の指定鞄で、手持ちの部分に大好きなぬいぐるみをぶら下げています。
そっと手を伸ばしてそれに触れてみました。
「ニャニャフィちゃん…」
そのぬいぐるみは、ぱっと見とても愛らしい造形をしていますが、しばらく見ているとどこか違和感を感じるようになって、その後だんだん首を傾げるような奇妙な感覚に襲われます。
どうみても猫の顔をしているのにウサギの耳と尻尾を持っているからでしょうか。それとも、一般的な人間の感覚では追いつけない超人的な何かを宿していたりするのでしょうか。
鈴ちゃんは教科書を頭の上まで移し、自分の両腕を組んで顎を乗せました。
「ニャニャフィ」と呼ばれたぬいぐるみをちょうど目の前まで持ってきて、指先でお腹のあたりをつんつんしてみます。
こうしていると折れた心が少しだけ癒される気がします。完全に現実逃避ともとれますが、鈴ちゃんにはもう何でもよかったようです。
「結局ニャニャフィちゃんってさ、猫なの? それともウサギ?」
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