黒猫のジンクス

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「百子なのっ!」 驚きを隠せずに、声を荒げた私に、あっけらかんと、百子は応えた。 「そうよ、やだな、百子よ、そんなにビックリしないでよ、さっちゃん」 私は、あまりにも様変わりした、百子の姿に戸惑った、信じられない、何がどうなっているのか、言葉が見つからないでいた。 「ちょっと痩せた(笑)だけでしょ、そんなに見つめないでよ」 ちょっとどころか、今40㎏として、30㎏は痩せたんじゃないの。 「ど、土日だけで、そんなに痩せるはずないわ」 声を荒げたのは、怖くなったから。そして少し疑わしい、本物の百子なのか。 私の態度に、彼女もそれを察してか、慌てて取り繕った。 「本当に私は百子よ。教えてあげる。これ、願いが叶ったの、おまじない、のおかげなのよ」 「!?」 おまじない、この信じがたい変化も納得せざるを得なかった。その言葉は、二人の共通の話題。二人が仲良しになった、私達の共通の趣味なのだ。 「も、百子なのね」 「うん」 百子は、目を潤め、安堵の笑みを見せた。 私も、ホッと胸を撫で下ろし、彼女の手を取った。 小さくなって、細く華奢な指だった。 いつも、ムニュっと汗ばんだ手指だったのに。 「ねえ、教えてよ、どんなおまじない?」 昼休みになり、私は、生まれ変わったように可愛く、百子のその姿を変えた、とんでもない、おまじない、に興味津々だった。 「白ご飯に、ふりかけを真円を描くように掛ける…」 「えっ、それが、その、願いの叶う、おまじないなの!?」 向かい合わせに座席を並べ立て、その上にお弁当を広げる。周りの男子の目が、美少女二人のランチに注目し始めて、少し落ち着かない。 でも、皆の目線の先は、実は百子にいっている。 痩せただけ…。 痩せるとこんなに可愛い娘だったとは。やっぱり悔しい。私が今まで、一番だったのに。 「これは、お弁当が美味しくなる、おまじないよ。今月号の墓と儚(ゆめ)、に載っていたでしょ」 ああ、調合系(お料理)には、興味が無かったから、スルーしたやつだ。 気を取り直して、私は言った。 「もう、お願い、そのおまじない、早く教えてよ」 「うん、教える、教えるけど、実は…」
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