黒猫のジンクス

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「えーっ。どのおまじないか、分からない!?」 放課後、私達はとある場所へ向かい、歩いていた。 「うん。金曜日の夕方、帰宅途中だったんだけど、白いネコを見つけたの」 「あーっ、それもしかして」 「そう、おまじない。『白猫があくびをしているとき、願いを言えば叶う』ってやつ」 知ってる。Reborn、8月号のやつだ。 あれ、でも、確か。 「百子、違うよそれ、あくびじゃなくて、くしゃみだよ、ほら書いてある」 私は、偶然もっていた、Reborn、8月号を見せた。 百子は少しおっちょこちょいな所がある。でもめげないところが可愛い。 「あっ、本当だ。とすると、次のだ。 その後ね、今度は、口の周りが黒いネコに合ったのよ」 それも、知ってる。確か、邪王、9月号のやつだ。えーと、そのネコと握手しながら願いを唱えると…。 「願いが叶うのよー」 「いや、違う。それは、金運が良くなるやつよ。だって招き猫だもん」 「え、そうなんだ…。じゃあ、最後のだ、これ、知ってる?」 もったい付けて途切れた、百子の言葉に、私は息を呑んだ。 『黒猫の前を横切る、その時、願いを言えば叶う』 それは、初めて聞いた、おまじない、だった。 「百子、それやったの?」 「うん、やった」 これが、百子の願いを叶えた、おまじない、なのだろうか。 私は徐に口を開いた。 「ねえ、どんな願いを言ったの?」 百子は立ち止まり、ゆっくりと体を私に向ける。 向かい合った二人の少女に、少し強い風がそよぐと、私の心を逸らせた。 そして、靡く黒髪が招くように、暗雲が背景を覆い始めた。 ようやっと百子が口を開く。 「願い、それはね…」 「ニャー」
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