猫紳士と猫のしっぽ

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翌日、私はある屋敷を訪ねた。 この街によくあるレンガ造りの家だったけど、普通の家の倍くらいの大きさがある。 正面にはちょっとした広さの庭があるけど荒れ放題で、背の高い柵に囲まれていて入れない。 裏の勝手口にぶら下がった紐を引っ張れば、けたたましい呼び出し音がなる。 かれこれ3回目くらいだけど、誰も出てこない。 どうしよう。待ち合わせの時間は過ぎている。 これで契約破棄なんかされたら堪ったもんじゃない。 そんな考えは、突然開け放たれたドアと怒声で吹き飛ばされた。 「煩いね!何度も何度も!」 ドアを開けたのは、ガリガリに痩せてケープを纏った老婦人だった。 これでもかというほど目を吊り上げて、片手に茶色い縞模様の猫を抱いている。 何だろう、屋敷の中はひどい匂いだ。 獣臭さとアンモニアが混じったような。 私は顔を顰めそうになるのを必死で堪えながら喋った。 「あの、今日からお世話になります、アクティニディアです。パーシーさん、ですよね・・・?」
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