4人が本棚に入れています
本棚に追加
私がおずおずと聞くと、老婦人はフンと鼻を鳴らした。
「こんな小娘だったとはね、まあいいさ、
紹介状寄越しな」
ショルダーバッグから封筒を渡した。
地方の名士の叔父からってことにしてあるけど、便利屋を使って用意したものだからヒヤヒヤした。
老婦人は封筒を乱暴に開けて、首からぶら下げた老眼鏡を通して中身をちらりと見ただけだった。
ホッとしたけど、結構お金使ったのに。
「じゃあ、後は任せたよ」
老婦人は屋敷の中に戻ってしまった。
「え、あの、仕事は何を」
「ハウスキーパーのやることは1つだろう。
全部だよ」
え・・・この広いお屋敷の床掃除も、食器磨きも、お風呂を炊くのも・・・まさか、庭師くらいは雇って、いや、あの草だらけの庭を見たところまずない。
おまけに、屋敷に一歩入った途端、一斉に何かが部屋の奥に駆け出した。
多分キッチンであろうこの部屋の、机の下、収納の影、戸棚の上から、キラリと2つ並んだ目玉たちがこちらをじっと伺っている。
それがすべて、猫!猫!猫!
匂いの正体が分かった。
屋敷の中では、夥しい数の猫が放し飼いにされていたのだ。
全部って、猫たちの世話もってこと?
私は目眩がした。
最初のコメントを投稿しよう!