猫紳士と猫のしっぽ

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もう二度と来ないつもりだけどね、と続ける前に、紳士は私に飛びつかん勢いで握手した。金色の目は星を散らしたようにキラキラしている。 「ようこそパーシー家へ!歓迎するよ。 私はラグドール。お嬢さんの名は?」 「ク、クーシャ・アクティニディア」 握手する手はぷにぷにした肉球に包まれていた。頭だけじゃなく体も猫らしい。 「よろしく、クーシャ。ベルもきっと助かるよ」 いや、あの意地悪そうな老婦人は使用人に感謝する人間には見えない。 家の事もやっていたか怪しい。 すると、紳士、おっと、ラグドールは瞼をふっと下げて悲しそうな顔をするものだからぎょっとした。 「本当は優しい人なんだよ」 なんだかいたたまれなくなって、私はつい言ってしまった。 「あ、あの、私、仕事が」 「ああ、すまないね。では、私は失礼するよ。 困った事があったら言ってくれ」 ラグドールはフサフサの尻尾をゆっくり揺らしながら、屋敷の奥に歩いて行った。 彼の姿が視界から消えた途端、なんだかどっと疲れたけど 「とりあえず、キッチンの掃除から、かな」 私はエプロンを着けて、袖を捲った。
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