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二人はこれでもかと言うほど慌てふためく。
「なんでそんな縁切りの糸切りバサミなんて持ってるんですかあんたは!」
「この仕事辞める時に全員の糸切ってやろうと思って準備してたのよ! 悪い!?」
「あんたホントに最低な神だな!!」
「それよりどうすんのこれ! どうすんのよこれ!」
結神は半泣きで叫んだ。
それにしても酷い動揺の仕方だ。これが常々恨み節で他人の不幸を望んでいる女の反応とは思えない。
「……随分動揺してますね。いつも言ってることせっかく実行出来たのに」
「はぁ!? 動揺するに決まってんじゃんあたし口先だけだもん! 本気で糸切ってやろうとか思ったことないし! 実行なんて出来ないよチキンだから! あ、腹立ってんのとか妬んでんのは本当だけど!」
本気じゃないならあんな風に言わなければいいのに、と部下は眉根を寄せながら思った。
自分の頭がだんだん冷静さを取り戻していく。
「ヤバイよヤバイよー。マジでヤバイよヤバイよヤバイよー」
「某リアクション芸人みたいになってますよ」
「うるさい! とにかく今の彼女の状況が知りたいわ。映し世の鏡を持ってきて!」
「了解しました」
本殿に置かれた三面鏡を結神の目の前に運んでくる。
結神はふっ、とひとつ息を吐くと、閉じられていた扉を開いた。
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