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"渡辺部長が早く奥さんと別れますように"
黒髪のストレートをハーフアップにし、ナチュラルメイクを施した清純そうな女性の願いは、見た目とは裏腹のなんとも腹黒いお願いだった。
「うわー……。この人不倫してますよ。しかも相手の家庭の崩壊を願いに来るなんて……最低な人ですね」
部下は眉根を寄せて非難の目を向ける。
しかし、結神は高らかに笑いながら楽しそうに立ち上がった。
「あっはっはっは! いいじゃないの面白いじゃないの気に入ったわ!! 昼ドラのようなドロドロの愛憎劇の末、相手の男は妻と別れるがいい! そしてその後この女も男に捨てられるがいい! あっはっはっは! なんて面白いのかしら! 他人の不幸は蜜の味!!」
「あーハイハイ。最低なのはあんたの頭でしたねそうですね」
すっかり呆れ返っている部下の様子なんて気にもとめず、結神は不満そうに言った。
「てかさぁ、たった五円で長々とお願いする人間とか超図々しくない? だって五円だよ? 五円。ちょっと神のこと馬鹿にしすぎだよね。しかも今時"ご縁がありますように"とか古いから! 人生賭けた願い事するならもっといっぱい金寄越せよ! こっちは慈善事業じゃねーんだよバカ野郎!!」
「神様のくせに結局金かよ!! 煩悩ばっかりじゃねーか!!」
部下もたまらず激しいツッコミを入れる。
結神は深い溜め息をついた。
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