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「ぶっちゃけさぁ、あたしここに配属決まった時はさぁ、おっ、縁結びの神社じゃんやったラッキーとか思ったの。だって先代の結神様は寿退社だったじゃん? しかも結構いいとこの神と。しかも結構イケメンの。だから次はあたしの番だー! って張り切って来たわけ。それがさ? 来る日も来る日も他人の恋の応援ばっかでさ? 他人の幸せそうな顔見せ付けられてさ? 自分の恋は全然進まないってどういうことなの!? ねぇ!?」
念のため言っておくが、彼女は素面だ。
アルコールの類は一切摂取していない。それでこの愚痴の多さだ、酒なんて飲んだらどうなる事か……。
おそらく彼女は一緒に飲みに行きたくない上司ランキング堂々の第一位だろう。
「ああ。先代の結神様は真面目で、中身も外見もとても美しい女性でしたからねぇ」
部下が懐かしむような、うっとりとした表情でしみじみと言った。
「文句も言わず勤勉でお淑やかな振る舞い、心から人々の幸福を願う素晴らしい結神様でした」
「……ちょっと。それじゃまるであたしが文句ばかり言う不真面目でがさつで、他人の不幸を望むブサイクな神様みたいじゃないのよ」
「あ、すみません。つい本音が」
「死ね!!」
結神はすっかり機嫌を損ねた。
空中で縦横無尽に張り巡らされた赤い糸を手繰り寄せて、指でひょいと摘む。
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