結神様の憂鬱

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「もうさ、これ切っちゃって良くない? この赤い糸切っちゃって良くない?」 「そんな事したら神様の権利剥奪されますよ」 「ていうかさ、もういっそのこと縁切り神社にしちゃって良くない? その方が儲かるって絶対」 「冗談はやめて下さいよ。ただでさえ最近この神社は信用ならないとか噂されてるのに。これ以上評判落としたらここ潰れちゃいますよ。本当に危ないんですからね?」 「え、嘘。世間ではそんな噂流れちゃってんの? マジで?」 結神は少し真面目な顔をして考え込むように言った。 「んー、やっぱあれかな。こないだ仲直りさせるはずだったカップルの喧嘩拗らせちゃったやつ。あれがマズかったのかな。それとも修学旅行の班決めで好きな子と離したやつが原因かな。それとも……」 「どんだけ心当たりあるんですかいい加減にして下さいよ」 「ちょっとくらいいいじゃん! それが原因で別れたりしてないし!」 「いやそういう問題じゃないでしょう」 結神はバタリと床に倒れこむ。そのまま不貞腐れたようにぐるぐると糸を弄っていた。 「あれ?」 部下の男が声を上げる。視線は拝殿の外に向けられていた。結神も気になるのか、顔だけそちらの方向へ動かす。 その先に居たのは、目を瞑って必死にお願い事をしている女の子だった。 さっきも参拝に来ていた女子高生だ。
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