結神様の憂鬱

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「あの子、さっきも来てましたよね?」 「あ? あー。あの青くっさい席替えの子ね」 結神は興味なさそうに言って自分の長い髪を整える。 部下は本棚から一冊のノートを取り出すと、新しく書き込みのあったページを探してパラパラと捲った。 このノートには神社を訪れた人の願いが自動的に書き込まれていくのだ。 「あの子の願い、どうやら席替えじゃなかったみたいですよ」 「マジで? あとからそれ見て仕事するつもりだったから適当に言ってたわ。てゆーかさぁ、今時手書きのノートとかアナログすぎない? タッチパネルで操作できるやつとか欲しいよねー」 「そんな予算うちに回されるわけないでしょう。最先端の機器が欲しいなら真面目に仕事して下さい」 「そんなの客がお賽銭もっと奮発すればいいだけじゃん。てかここの神主も宣伝とかして客足増やせばいいのにさぁ、なんで何もしないの? このままじゃ潰れるよ?」 「あんたがちゃんと仕事を全うし、きちんと縁を結んでくれれば宣伝なんてしなくてもこの神社は評判も客足も上がり問題は万事解決です。現に先代の時はそうでした。貴方に代わってからですよ? ここの業績が落ちているのは!」 「えーっと何なにぃ? 明日の告白がうまくいきますように? あーそっかぁ! あの子明日告白するのかぁ!」 結神は大きな声でノートの内容を読みあげ、部下の小言から逃げ出した。 部下は結神をひと睨みしてから、諦めたように溜め息をつく。彼の苦労は計り知れない。
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