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「どれどれ。この結神様がどんな感じなのか見てやろうじゃないの。さーてと相手はー? この糸かな? よっ!」
結神は一本の糸を引っ張った。
「……なぁーんだ。あたしが何かしなくてもとっくに繋がってんじゃんつまんない。さっさと告ってさっさとくっつけばいいのよ。てかリア充はうちに来なければいいのに。ホント嫌んなっちゃう」
「……性悪女」
「なによ。なんか言った?」
「別に」
一気にやる気を失った結神はまた床にごろりと横になった。
部下も自分の仕事を全うするべく立ち上がると、本殿へ向かって歩き出す。
「あーあーいいなー。両想いかー。いいなー。羨ましいなー。明日からカップルかー。いいなー」
結神はぶつぶつ言うと、懐から鋭い刃の糸切りバサミを取り出した。
「あーほんと羨ましいわ腹立つわー。もう切っちゃう? これ切っちゃう?」
言いながらどんどん糸に刃先を近付ける。部下が戻ってくる様子はなく、この暴走を止める者は誰もいない。
その右手に少しでも力を加えれば、ぷっつりと切られてしまうだろう。
結神はふ、と自嘲気味に笑った。
「なぁ~んてね。いくらあたしでもさすがにそこまでしないって。さて、たまには真面目に仕事しようか……でっ!」
その瞬間、背中にガッと衝撃を受けた。
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