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「ああ、居たんですか。すみません気が付きませんでした。邪魔です」
"縁結びリスト報告書"と記されたファイルを読みながら戻って来た部下は、寝転がる結神を冷たい視線で見下ろした。
「邪魔だなんて失礼ね! もっと敬いなさいよ! あたしは神様なんだから!」
不機嫌そうに言ってふいっと前に向き直る。自分の手元を見た結神の動きが止まった。次いで、肩がぷるぷると震えだす。
カシャーン。結神の手元から糸切りバサミが滑り落ちた。
「……結神様?」
部下も声をかけるが、反応はない。
そんな結神を不審に思って、部下は抱えていた荷物を床に置くとそっと顔を覗き込む。顔色は真っ青だった。
「どうしたんですか?」
「あ、あ、あ、」
部下の問いかけに、結神は言葉にならない声を出す。
「落ち着いて下さい。何があったんですか?」
「あ、あ、あ、赤い、糸!」
「赤い糸?」
「そう、糸! き、き、き、切っちゃ、切っ、切っちゃった……!」
結神は震える声で言った。
一拍遅れて部下は大声で叫び出す。
「は、はあああああああああ!? あんた何やってんの!? マジ何やってんですかあんたー!?」
「ちちち違う! わざとじゃないこれはあたしの意思じゃない!! あんたが! あんたがぶつかってきた拍子にぷつんって!! 赤い糸ぷつんって切れちゃったああああ!!」
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