第1章

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彼女は、大学に行く時も買い物に行く時も、必ずそのカバンを持ち歩いた。 三毛猫のストラップは、いつも彼女と一緒にいる。 つまり、俺が一緒にいるってことだ。 そう、俺は今ストラップになって彼女のカバンで揺れている。 ちょっとだけの手伝いとは何をするのか、彼女のそばで確認している最中だ。 そして、気がつく。 毎朝、彼女がドキドキしていることを。 学校に向かうバス停で、いつも一緒になるあいつ。 メガネをかけた、真面目そうな男だ。 彼女は、バスを待つ間本を読んでいる。 けれども、本に集中していない事はすぐにわかった。 あいつが道路の向こう角に見えた瞬間、全身が心臓になったみたいにドキドキするんだ。 カバンにいるストラップの俺まで揺れるくらいに。
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