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「結局、プランを聞くことも無いまま…あんなことになってしまって…」
レイフはウォーレンをあまりよく知らない。だが、そんなにあれこれと率先して企画をたてるような人間だったのだろうか…。しかも調理場にまでだ。
「代理はどんな人でしたか?」
「黒人とのハーフの女性です。確か…名前は…ファネルさんという方で…、」
ウォーレンを殺した、女だ。
「ビディさんの屋敷で家政婦をしているとおっしゃっていました」
本名はメアリー・モーガン。
ビディと敵対していたファミリーの生き残りで、執念深くウォーレンの殺害計画をたて、ビディの屋敷を吹き飛ばし、死んだ女だ。
「それで、その後彼女から連絡は?」
「ご希望の席を決められた時に一度、連絡がありました。後は何も…。連絡もつかなくて、仕方がないので、先日予約の確認を会社に入れさせてもらいました」
そこへ、年配の男が割り込んできた。
「あぁ、ブルレックさん、久しぶりです」
ガスパールは笑った。
「あぁ、シュレンジャーさん、では、また…、店にはすぐに連絡しますから」
レイフは会釈して、まだ聞きたいこと、いや、聞かなければならないことが山ほどある気がしながら、ガスパールの背中を見送った。
シムがレイフの顔を覗き込んだ。
「どうした」
「スージー・ファネルは、ウォーレンを殺した女だ」
その声は独り言のようにも聞こえた。
シムは少し驚いたようにレイフを見つめた。
「…そうなんだ…」
「何カ月も前から屋敷に爆弾を仕掛けていた」
「…もう死んだんだろ」
「あぁ、」
だが、何か不安が残る。
シムがレイフの背中を軽く叩いた。
「あっちへ行こう、イタリアのワインコーナーだ」
シムは最近のレイフには驚かされることばかりだ。
今までレイフは不安を口にしたことなど一度も無かった。どんな状況に追い込まれようと、いつでも淡々とそれを受け入れていたからだ。
シムは薄々は気づいていた。
レイフの、マックスに対する感情は、まるで恋だ。
マックスに会ってから、レイフは変わった。
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