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夕方近くになり、長い時間をかけてレイフの容体が少し落ち着いた。
シムが席を立った。
「店を開けなきゃいけない。レイフの店だ…。今まで一度も臨時休業なんかしたことないんだ」
マックスは少し驚いたが、
「うん…」
と、だけ返事をした。
おそらく、それがレイフとシムの関係なのだ。
いや、そうやって、シムがレイフを守っているような気もした。
「あいつが…帰って来た時に、店が傾いていたら困るからな…」
マックスはただ頷いた。
「店が落ち着いたら、また来る…」
シムは数歩行きかけて、振り向いた。
最初は何か言い淀んでいたが、やがてゆっくりと口を開くと
「何かあったら連絡してくれ」
と、言った。
そしてマックスに連絡先を渡すと、疲れたようにトボトボと、病院の廊下を歩いて行った。
マックスはその背中を見つめるしかできなかった。
日が落ちかけてきた頃に、どこでどう調べたのか、ニールが来た。
「様子はどうだ?」
ガラス張りの部屋にしがみつくように立ち尽くし、一点を見つめるマックスの背後から声が聞こえた。
「ニール…頭…大丈夫なのか?」
ニールの頭に巻いた包帯が痛々しい。
「大丈夫だ」
「どうしてここに?」
「レイフのところにいるんじゃないかと…ワイアットが言った…」
「ワイアット?ワイアットがどうして?」
ニールはマックスを無表情に見つめた。だが、その返事も無く、ガラスの向うを何気なく振り向いた。
「帰らないか?」
マックスは首を横に振った。
「そうか…じゃあ、ここで話そう」
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