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最近、よくそのことを考えていた。
プレゼントは何がいいだろう…。
その日、少しでもいいから一緒にいる時間を持ちたい…。
「ハッピーバースディ」の言葉を、マックスはどんな表情で受け止めてくれるのだろう。
考えれば考えるほど、今まで経験したことも無いほど胸が熱くなった。誰かの『誕生日』がこんなにも幸せをくれる、そんなことを今まで知らずに生きてきたのだ。
だが、色々想像はするが、いつも思考は決まった最終結論を出して終わる。
マックスの特別な日だからこそ、自分はそこにいてはいけない気がする…。
「レイフ、30日、俺の誕生日なんだ」
「ああ、」
思いとは裏腹に、口から出る言葉は素っ気ない。
ワザとではない。
「ウォーレンが、フレンチレストランの予約を入れてくれてたんだ。ブルレックって有名なレストランなんだって。…ウォーレンはいないけど…」
寂しそうにマックスはそう言うと、笑った。
「でも行きたいんだ…」
レイフは黙ってマックスの表情を見つめた。
ウォーレンの話をする時のマックスは、とても色っぽい。きっと彼のことを思い出すとそんな顔になるのだ。
「そうか、」
「一緒に行かないか?」
ウォーレンの思い出話でもしようと言うのだろうか。
レイフは、ウォーレンを殺そうとしたのだ。とてもその状況で一緒に食事をする気分にはなれない。
それに、マックスの口からウォーレンの名前が出るたびに、レイフは我に返った。自分は、本当ならマックスの側にいるはずの無い汚れた人間なのだ。今まで何人もの人間を殺してきた。マックスのそばにいてはいけない理由にしては十分過ぎる。
だが、頭では分かっていても心は離れられない。
「あ、いや…仕事が…」
マックスはレイフをじっと見つめたまま、小さく
「そうか…」
と言っただけだった。
きっと、レイフが行くと思っていたに違いない。
「悪い…」
「いいよ、」
マックスは微笑んで、鍋に、指を突っ込んだ。
「あっつ!」
マックスは時々、天然だ。
レイフは咄嗟にマックスの手を取った。
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