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マックスは、ブルレックにチェリーと、そしてニールを連れて行った。
ニールが支払いを会社持ちにしてくれたので、一番適当な人選だろう。
内装は地中海を意識したのか、所々に丸い大きな柱があり、ツタを絡ませてあった。
レンガの壁に埋め込まれた大きな壁画は女神像だ。
3人が通された席は、大きな玄関を入ってバーの前を通り過ぎ、整然と並べられた純白のテーブルクロスを横目に、石の階段を数段上がった奥まったところにあった。
一番奥の大きなガラス窓からは、街の景色がレースのカーテン越しに見渡せる。
半個室状態で、隣の席との間にスリガラスのパーテーションが立ててあった。
が、広い。
「すごいわね」
ニコニコしながら、チェリーはキョロキョロとしていた。
「すごいわ」
それしか言葉が出て来ないようだ。
彼女はとてもしぐさが可愛い。
マックスは、周りを見回しているうちに、ウォーレンと来たかったという思いがわいてきた。
この席に座ってウォーレンと一体どんな会話ができたのだろう。
そう想像すると、とても寂しい気分にもなった。
座ってすぐに、注文もしていないのにスパークリングワインが来た。
「これは?」
マックスがウエイターに聞くと、
「ご予約いただいた時に、ご注文されたマンゴースパークリングワインでございます。特別に取りよせました」
ウエイターは笑って、
「すぐにアミューズをお持ちいたします」
と、去って行った。
チェリーがグラスを取った。
「マックス、誕生日おめでとう」
「有難う」
乾杯の後の一口で、マックスは涙がこみ上げてきた。
美味しい。甘くて、大好きな味だ。
ウォーレンはマックスの為にこれを用意していてくれたのだ。
「どうしたの?」
チェリーが気づいてマックスを気遣った。
「あ、いや…、ごめん…、これ…ウォーレン、きっと飲まなかっただろうな…甘くて…」
笑ったマックスの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
ニールは黙ってマックスを見つめていた。
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