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ある日のこと。
僕は少し急いでいた。登校中だった。家を出るのがいつもより二分も遅れてしまい、僕はプンスカしていた。珍しく走っていた。いつも僕はのんびりと小学校への十分程の道を歩いていくのだ。
運動が少し苦手な僕なので、あまり思うように体が動かなかった。それでも一生懸命足と手を動かした。
通学路にある一センチ程の小さな段差をいつもは気にすることはない。普通に歩いていれば全然大丈夫なのだ。
ただしこの時僕は走っていた。
見事にその段差につまずいた僕は少し吹っ飛んでから体全体を使って着地した。膝、お腹、肘、おでこ、全てが痛い。勢いはそれだけでは収まらず、僕はすごい勢いで地面を転がった。体が雑巾になって絞られたみたいにぐにゃん、となった。特にほっぺたがコンクリートの地面に擦れて大変だった。耳の付け根と鼻も痛い。
ようやく体が止まってから、僕は素早く起き上がった。僕はそこらへんの小学生と違って、並ではない程の根性があるので、転んだくらいでは泣かないし、転んだままの体勢でジタバタもがくような馬鹿もしないのだ。
しかし、今まで経験したこともないくらいに痛みが強かったので、しばらく呆然とした。視界がぼやけている。ここで僕は自分がメガネをかけていないことに気づいた。
慌てて周りを見回す。景色の輪郭が定まらない。灰色のコンクリートの地面の上の一部が黒くなっていることに気づいた。そのあたりで手をひらひらさせた。メガネがないと遠近感覚がくるう。
ようやくそれを掴んでみてみる。確かに僕のメガネだ。安心してそれをかけた。景色が鮮明になる・・・と思ったらまたぼやけた。メガネが僕の顔から転がり落ちたのだ。
まさか・・・と思ってメガネをじっとみると、明らかにそれがおかしいことに気づいた。変な方向に曲がっている。鼻がつくくらい近づいて観察するとレンズが割れていることも分かった。
僕はどうすればいいのかわからなかった。
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