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「立て少年。私たちは急がなければならない」
いきなり声をかけられ、驚いて顔を上げる。
女の人の声だった。なんていうかアニメで聞くような声。そこには立っている人はどうやら大人みたいで、しかも変だった。変というのは、格好が。よく見えないけど、腕と足のところが丸見えだし、頭にはウサギの耳のようなものが二個付いている。
うん。変だ。
「今日はパーティなのだ。早くしないと遅れてしまう」
僕は首をかしげた。だって僕が急いでいるのはパーティに行くからではなくて、学校に行くからだ。第一ウサギ耳の女の人は学校に行く年齢にも見えない。
「なんのパーティに行くの?」
「理由なんて必要ない。早く不思議の国に帰らなくては」
僕はようやく納得した。ウサギ。パーティ。不思議の国。これだけ揃えば答えは簡単。
「お姉さん。不思議の国のアリスごっこをしているの?だけど僕は今から学校に行くんだ。だからムリだよ」
「何を言っているんだ。メガネが壊れたら授業なんて黒板が見えなくて受けられないだろう」
「それはそうだけど・・・」
だからと言って学校に行かないのは良くない。困っているとお姉さんは手を挙げた。人差し指だけ突き出して、空を指差しているみたいだった。
「この世界は人間による文明、すなわち五感によってできている!」
そして今度はあっけにとられる僕に向かって指を突き出す。
「感覚の一つである視覚を失ったお前はこの世界から退場して不思議の国に行くべきだ!」
なんだこの人。
「い、意味がわからないよだって僕・・・」
僕は不思議の国に連行された。
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