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「どうして!?どうして五感がなかったら『文明の下』で暮らしていけないの?訳がわからないじゃないか!ここにいるみんな、『文明の下』でお日様の光を浴びて生きる権利があるんだ!ここ掘れワンワンができなくてもいいじゃないか!竹といっしょに割られちゃったなら竹になればいい!イジワルでもいい!文明が嫌いなら正々堂々と文明をぶっ壊せばいいんだ!それに、」
僕のスピーチを聞いている聴衆は目をうるうるさせていた。耳の聞こえない人は手話で内容を聞いている。
僕は胸を張って、灰色の天井を指差した。
「それに、メガネが壊れたなら作り直せばいい!」
「そうだあ!」
「パンがないならケーキを食べればいい!」
「イエッサー!」
「文明とは僕らの下にあるんだ!『文明の下』に僕らがいるんじゃない!」
「いよっ!大統領!」
「王様!」
「そーりだいじん!」
不思議の国の人々が一つにまとまった。実に感動的なシーンだった。
「こんなドア、壊してしまおう!みんなで壊せば怖くない!」
「いけー!」
白雪姫は毒リンゴを扉に投げつけた。犬は犬らしくない動作で扉を蹴った。継母とお姉さんたちは聞くに耐えない言葉を扉に向けて、それをいじめた。かぐや姫は竹を引っこ抜いた。天狗はよくわからない術を使った。
みんなとても頑張っていたが扉はビクともしない。
しかし僕はこの扉を開く方法を『感覚』で知っていた。
ここは犬が喋り、白雪姫や、かぐや姫が存在する不思議の国だ。
僕は扉の前に仁王立ちになった。
「ひらけーえごまっ!」
グギグギと音を立てて扉が開いていき、僕らはそれに吸い込まれた。
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