冬がくる

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 北からの使者が告げるそばから、道路際のたんぽぽも、空を悠然と泳ぐ綿雲も、風に乗って進む鳶も、みな残らず歓喜の声を上げた。  秋の王女が微笑んで膝を曲げる。 「さあ!」  王女はみなに呼びかける。しゃらしゃらと紅葉が舞い落ちた。 「女王を迎える宴の用意を!」  雷鳴が轟き、知らせに森の木々たちはざわめいた。 「宴を! 女王がやってくる!」 「歓迎の宴を! 冬の女王の、お出ましだ!」  雲が空を覆い、ばらばらと雨が落ちたかと思えば、湖に太陽が照り映える。  次なる使者が雪娘たちを引き連れてきた。 「我らが女王のお通りだ!」  娘達はみぞれを降らせ、狼達の吠え声は吹雪となる。  秋の王女は跪いた。  真白いマントをはためかせ、冬の女王がやってくる。 「お待ちしておりました」  女王はそっと、王女の頬を撫でた。 「よくやった」  冠が日差しを受けて、きらきらと光った。虹色に反射するあたたかくも冷たい結晶。 「さあお前達! これから忙しくなりますよ!」    降り積もるは初雪。  北の大地に、今年も冬がやってきた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加