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北からの使者が告げるそばから、道路際のたんぽぽも、空を悠然と泳ぐ綿雲も、風に乗って進む鳶も、みな残らず歓喜の声を上げた。
秋の王女が微笑んで膝を曲げる。
「さあ!」
王女はみなに呼びかける。しゃらしゃらと紅葉が舞い落ちた。
「女王を迎える宴の用意を!」
雷鳴が轟き、知らせに森の木々たちはざわめいた。
「宴を! 女王がやってくる!」
「歓迎の宴を! 冬の女王の、お出ましだ!」
雲が空を覆い、ばらばらと雨が落ちたかと思えば、湖に太陽が照り映える。
次なる使者が雪娘たちを引き連れてきた。
「我らが女王のお通りだ!」
娘達はみぞれを降らせ、狼達の吠え声は吹雪となる。
秋の王女は跪いた。
真白いマントをはためかせ、冬の女王がやってくる。
「お待ちしておりました」
女王はそっと、王女の頬を撫でた。
「よくやった」
冠が日差しを受けて、きらきらと光った。虹色に反射するあたたかくも冷たい結晶。
「さあお前達! これから忙しくなりますよ!」
降り積もるは初雪。
北の大地に、今年も冬がやってきた。
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