グラスの向こうの君

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「なんじゃ、埃でも目に入ったんか?」 夫はすみ江の涙を指で優しく拭い、 「すみ江さんは本当鈍臭いのぉ。 ほれ、こうすればいいんじゃ」 そのまま、自分が掛けていた眼鏡をすみ江に掛けた。 「それだと、あなたがまた見えなくなっちゃいますよ」 すみ江は泣いた顔で笑った。 「儂の隣には、ずっと一緒に導いてくれる人がおるから大丈夫じゃ」 「そうですね、ずっと一緒にいますからね。 またプロポーズして下さいね」 「プロポーズなんて一度きりじゃろ」 眼鏡の向こうの夫も笑った。 三度目のプロポーズがあっても嬉しいですよ、その言葉は胸に、二人で仲良くまた畦道を歩き出した。
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