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「なぁオマエさぁ。
男いねーんだから、タカとつき合ってやれよ」
普段、たまり場にしてる階段の踊り場で
サボリ仲間のコウに、そんなこと言われ
私は、枝毛探しする手をとめた。
「は?なんでだよ」
「だってアイツずっと片想いで、かわいそうだろ?」
べつに、コウとこんな話をしたくて、ここに来たわけじゃない。
ただ地理の授業がつまんなくて
そのうえ、理解できないし、くだらないから
始まる前に、教室を抜けだしただけ。
「絶対イヤ。死んでもイヤ」
17年ほど前、両親により〝静〟と命名された私だが
読み方は、シズカ…ではなく、単にシズ。
まぁ、それはべつにどっちでもいいんだけど
親の願いもむなしく、私は全く〝静〟なタイプとは正反対の
粗暴な人間に成長し、今に至る。
「じゃ‥じゃあ、オレは?どう?」
さっき、ろくでもない提案を私にふっかけてきたくせに
今度は身を乗り出すようにして、顔近づけてくるコイツの名は、石上コウ。
ヤンチャな少年→悪ガキ→不良→チャラ男…という
一般的なヤンキー道を、ブレもせずに歩んできた
筋金入りの、万年思春期反抗期なヤツ。
「アンタ彼女いるじゃん。バカだろ」
ため息まじりに顔を押しのける。
どうしてこんな、いい加減な男がモテるのかはわからないけど
だいたい、いつも隣に可愛いコ連れて、嬉しそうにしてる。
「そんな冷たいこと言うなよ。
べつにアイツとは別れてもいいからさぁ」
「さいてー。死ね」
嫌いだわ。コイツのこういうとこ。
女を何だと思ってるんですかね。
「えーじゃ今度オマエの家、行かせて?」
「は?何で?」
「理由なんてねぇけど、頼む!一回だけでいいから!」
「イヤに決まってんだろ!!」
勉強できなくて男言葉つかってスカート短くしてる女は全員
尻軽ビッチだとでも思ってるんだろうか??
マジ許せない。
「なぁ、シーズーちゃーん」
「甘えた声出すなよ、キモいな!」
押し問答してたら、コウが急に何かに気づいたように顔をあげ
そのまま一点をにらみつける。
「あぁ?何見てんだよオマエ!!」
コウの視線の先…上の階へと続く、階段の中ほどに立ってたのは
鳴坂チハヤ…という名の、うだつの上がらないメガネ教師。
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