―私の先生が、のびタロウである理由―

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その日の晩 私は自宅マンションのリビングで一人、ボンヤリとしてた。 去年の夏、両親が国外に転勤になって以来 この部屋で暮らしているけれど 親のいない生活に…実はすごく満足してる。 学校で問題ばかり起こす不真面目な私を、ずっと厄介者あつかいしてた あの父と母の監視下から逃れられたのは、幸運だった。 もし今そばにいたら、絶対やめなさい!って、叱られるに決まってるけど べつにこっちは、悪いことしてるつもりないし。 人に言ってないだけで、バレないようにしてるだけで… 本当に、他には何もいらないと思えるくらい、今が幸せなんだ、私。 だって…… 「ただいま」 ホラ玄関から聞こえてきた声。 「あ、おかえり」 私は見てた動画を消して、スマホから顔をあげる。 以前は玄関まで走って出迎えに行ったりしてたけど さすがに子供っぽいと思われそうで、最近は我慢するようになった。 「今日も疲れたなぁ」 そんなこと呟きながら、リビングに現れ… 着ていた上着を脱いで、ネクタイ緩める仕草する男を 私は座ったまま、横目で追ってたりする。 「お疲れ様。ごはん、できてるよ?」 なんて自分のセリフも、なんだか新婚夫婦みたいじゃない? 「ありがとう。いつも」 そう言ってコトリ…外したメガネを目の前のローテーブルに置き 私の隣に腰をおろす相手。 私は膝を抱えて座った状態で、ちょっとドキドキして… それでもバレないように、相手のことをチラ見しながら けっこう待ち望んでたりする。 「ごはん、後にしようかな」 ボンヤリと耳に響く、そんな言葉。 「…何するの?」 わかってるけど。 さっきメガネ外したのが、合図みたいなものだから。 「何だろ?」 背中に腕をまわされ そのまま肩を抱き寄せられる。
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