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12月1日。
夫が事故で意識不明になってから、ひと月になります。
私は、あの日から、毎日夢を見るようになりました。
何か意味があるような気がして、今日から、日記を書こうと思います。
決まって、白い雪の降り積もった平原を、必死で雪かきをしている夢です。
鼠色の雲の切れ間から浮かぶ月の中、私は、スコップを手に、雪かきをしているのです。
夜なのに、あたりが暗く感じないのは、月明かりと、それを跳ね返す白い雪の大地のせいでしょう。
とめどなく、とめどなく、ひっそりと雪が降っていて、私の頭や、肩や、腕に乗っては、月の透き通った光をまとって、ちりんちりんと鳴っています。
ふーっと、白い息をふきかけると、熱で消えてしまう、そんな淡い者達です。
だけど、もし、息をするのをやめてしまったら、彼らは、着実に、私をこの大地の白さの中に埋めてしまうでしょう。
儚くて美しいと、うっとり油断していたら、飲まれてしまうこわさを後ろ手に持っている。
だから、私は、気を引き締め、手を休める事なく、スコップで雪をかいて進んでいきます。
私の腰には、ほんわりと穏やかな光を放つランタンが下げられています。
その光が、まっすぐにどこかに向かって伸びているのです。
私は、その光の先を目指しているようでした。
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