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気がつくと、僕は、見知らぬ家にひとりだった。
山小屋のような、小さな家。
木製の椅子、テーブル、ベッド。
とても古びた、ブラウン管のテレビが一つ。
テーブルの上には、ランタンが一つ置いてある。
その光が、部屋の唯一の灯り。
窓がある。
外を見ると、濃紺の闇の中、白く浮かび上がる、真綿のようなものが、ふわふわ浮かんでは落ちていくのが見えた。
雪が降っている。
窓を開け、手を伸ばして、そのひとつを受け止めると、じんわりと融け、そのうえにさらにまた、落ちては消えていく白い者達。
とめどないので、僕の手のひらの上で、小さな湖ができた。
部屋のドアを見つけると、僕は外へ出ようと押した。
しかし、それは、とても重い。
扉が重いのではなかった。
降り積もった雪のせいだった。
それは、僕の膝あたりまであって、このままでは、この家が雪に埋もれてしまう、そう思った。
ドアの横に、ひとつスコップが立てかけてあった。
僕は、それを手に、雪をかいていった。
とりあえず、家の周りだけでも。
空を見上げると、雲の切れ間から、ぽつんと空いた穴のような月が、僕を見下ろしていた。
そんなわずかな光なのに、雪の大地が、存分に月明かりを飲み込んでいるので、あたりはさほど暗く感じなかった。
雪の平原に、たった一つの家。
そこに、ひとりいる僕。
状況がよく飲み込めない。
考えたら、混乱しそうだったので、とりあえず、雪かきをして気を紛らわせることにした。
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