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それでも世間体のためと離婚はせず、
形だけの『家族』は続けられた。
ウチの母は20歳で父と結婚し、
一度も働いたことが無かったため、
離婚が怖いのではなく、
自立するのが怖かったのだと思う。
結局、女子高生の妊娠は狂言で、
それでも父は彼女と暮らすことを選び、
微々たる生活費だけを母に渡し続ける。
それだけでは暮らしていけないので、
母が洋裁関係の内職を始め、
兄が新聞配達をし、俺も家事をこなし。
そんな生活が2年ほど続き、
ある日突然、電話が掛かってくるのだ。
…父が亡くなったと。
巡回時に、人気のない裏通りで倒れ、
そのまま数時間が経過し、
救急車で運ばれた時には既に手遅れで。
脳溢血だったそうだ。
可哀想に、女子高生は家族ではないので、
最後を看取ることも出来ず、
葬儀も目立たぬ様に隅の方で座っていて。
……
『家族』って、何なのだろう?
したり顔して遺族席に座っていたけど、
もう、俺たちは家族じゃなかった。
父は、愛情の無い母や俺たちではなく、
あのコに見送って欲しかったはずだ。
でも、書類上の家族は俺たちで。
この頃の俺は、
『家族』という言葉に対し、
不信感しか抱くことが出来なかった。
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