[芹香編] 第4章 西村side

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それでも世間体のためと離婚はせず、 形だけの『家族』は続けられた。 ウチの母は20歳で父と結婚し、 一度も働いたことが無かったため、 離婚が怖いのではなく、 自立するのが怖かったのだと思う。 結局、女子高生の妊娠は狂言で、 それでも父は彼女と暮らすことを選び、 微々たる生活費だけを母に渡し続ける。 それだけでは暮らしていけないので、 母が洋裁関係の内職を始め、 兄が新聞配達をし、俺も家事をこなし。 そんな生活が2年ほど続き、 ある日突然、電話が掛かってくるのだ。 …父が亡くなったと。 巡回時に、人気のない裏通りで倒れ、 そのまま数時間が経過し、 救急車で運ばれた時には既に手遅れで。 脳溢血だったそうだ。 可哀想に、女子高生は家族ではないので、 最後を看取ることも出来ず、 葬儀も目立たぬ様に隅の方で座っていて。 …… 『家族』って、何なのだろう? したり顔して遺族席に座っていたけど、 もう、俺たちは家族じゃなかった。 父は、愛情の無い母や俺たちではなく、 あのコに見送って欲しかったはずだ。 でも、書類上の家族は俺たちで。 この頃の俺は、 『家族』という言葉に対し、 不信感しか抱くことが出来なかった。
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