[芹香編] 第4章 西村side

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それを聞いた華子は、急に無口になり、 俺の横顔をひたすら見つめ出す。 「何だよ、そんなに見るなよ」 「そんな人が今頃どうして?」 「さあな。取り敢えず電話してくるわ」 「う、はあい」 心配そうな華子の目に見送られ、 自室に移動して電話した。 今頃どうして? 今更なにを? そんな疑問ばかり浮かんだが、 それ以上に知りたかったのだ。 …最期の父を。 何を思い、何を考えていたのか。 ただ、それだけが知りたかったのだ。 プルルと呼び出し音が大きく響き、 その人が応答する。 予想外にその声は優しくて。 余計なことは話さず、 待ち合わせの場所と日時だけを決め、 静かに俺は電話を切った。 …… 明後日の夜7時、 駅前の喫茶店でその人は待っていて、 会うとそれは嬉しそうにこう言う。 俺が父に似ていると。 とてもソックリで驚いたと。 その言葉はあまり嬉しくないと答えると、 彼女は現状を語り出す。 東北の方で美容師をしていて、 もうすぐ結婚するのだと。 すべて父のお陰だと。
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